どうも。あざらしです。今回はStatic pressure systemについて記載します。特にチェックライドで試問される範囲を重点的に記載します。
Static pressure system
Static pressure system の概要
動作する計器は、全て圧力差を利用します。ここら辺は、高校の物理学で習うベルヌーイの定理で理解できるかと思います。
当該システムで動作する計器は、「Airspeed indicator、Altitude indicator、Vertical Speed Indicator」 の3つです。
上記の全体図から
- Airspeed indicator:Pitot tube(全圧)とStatic port(静圧)が二つ必要
- Altitude indicator : Static port(静圧) だけ必要
- Vertical Speed Indicator : Static port(静圧)だけ必要
ということが分かります。
では、ピトー管で計測される全圧と、Static portで計測される静圧とは?
圧力測定装置と圧力の種類
圧力を測定するために、Pitot tube(全圧用) と Static port(静圧用) の2種類の部品が使用されます。
- 全圧とは:Pitot tubeのRam air inlet(空気流入口)での圧力
- 静圧とは:Static portは、機体回りの圧力を受けにくい場所に設置されています。「今いる場所の外気圧=静圧」 となります。
- 動圧とは:全圧 - 静圧
殴り書きでスミマセン
計器別
Airspeed indicator(対気速度計)
小型機のコックピット内に設置されている対気速度を表す計器です。ベルヌーイの定理を用いて、動圧を元に速度に変更した値を表示します。
※計算式がチェックライドで問われるかというと、否ではないでしょうか。覚えておいた方が良いとは思います。
機構としては、図の通り「Pitot tubeは計器のダイアフラム(空盒)」に接続され「ケース内はStatic port」に接続されています。Pitot tubeから流入する空気圧(全圧)と、ケース内の外気圧(静圧)の差分でダイアフラムが膨張と収縮することで計器を動かします。なので、Pitot tube(全圧)とStatic port(静圧)両方が必要 です。
※ダイアフラムとは、アコーディオンの蛇腹みたいなものです。
では、もしPitot tubeの流入口が詰まってしまったら?
Ram air inletだけが詰まった場合
下記の図のように、全圧を計測する場所が詰まってしまう場合があります。一番可能性が高いのはIcingで先端が凍ってしまう事でしょう。Icingの影響が先ず出るのは、機体の小さな突起物から凍っていきます。図でもわかるように、ピトー管にはDrain holeという水抜き穴が開いていますので、今回は流入口だけ詰まったとしてお考え下さい。
原因:icing や、虫などの異物が詰まる
現象:Drain holeはピトー管の後ろ側に設置されています。なので、空気圧が「Static port=Pitot tube」になってしまうので、速度計は”0”を示します。
対処:Icingの可能性がある場合にはPitot HeatをOnにする。改善しない場合は最寄りの空港へ速やかに着陸する。
Ram air inlet と Drain hole が詰まった場合
下記図のように、ピトー管の2つの穴が詰まって機能しなくなった場合にはどうなるでしょうか。
原因:icing や、虫などの異物が詰まる
現象:ピトー管側の空気圧が固定されます。Static portは外気圧になるため、変動する圧力は静圧側だけ。
上昇すると、外気の分子量は減り外気圧が下がります。下降の場合には、逆に外気の分子量が増え外気圧が高くなります。
図で説明すると・・・下記図の水色の点は外気の空気分子量と考えてください。
例えば、指定高度で飛行中「Pitot 側の圧力を100、Static portの外気圧が50」とした場合、Pitotが詰まった場合、Pitot側の圧力は100で固定されます。
もし当該状態のまま上昇すると、「Pitot側100のまま Static側50→30へ圧力低下」します。要は差分50から70に圧力差(動圧)が大きくなるのです。よって、「圧力差が大きくなる=速度が速く表示される」ということです。
下降も同様で、「Pitot側圧力100のまま、Static側50→70へ圧力上昇」すると、差分50から30に。よって、「圧力差が小さくなる=速度が遅く表示される」という仕組みです。下降時の分子量をざっくり図にすると下記の通りです。「ダイアフラムが収縮する=空気の流入する圧力が弱い」と判断され、速度が遅いと表示されるのです。
対処:Icingの可能性がある場合にはPitot HeatをOnにする。改善しない場合は最寄りの空港へ速やかに着陸する。
Static portが詰まり、ピトー管は機能している場合
Static pressure systemで動作する全ての計器に影響が受けます。今回はAirspeed indicatorのみの影響について記載します。
原因: icing や、虫などの異物が詰まる
現象: Airspeed indicatorは動きますが、信頼できる数値ではありません。
例えば5000FTを飛行中にStatic portが詰まった場合、6000FTまで上昇すると速度は遅く表示されます。逆に高度を下げると速度は速く表示されます。
先ずStatic portが詰まることにより、Portから各計器まで続くチューブ内の気圧は「5000FTの外気圧で固定」されています。上記のピトー管の2穴が詰まったときの逆ですね。高度を上げれば上げる程、外気圧は低くなります。よって、ピトー管で計測される圧力も低くなっていきます。逆もまた然り。
例)詰まった圧力「Pitot側100、Static側50」としたとき、高度を上げ、速度は一定とした場合「Pitot側へ100→90へ圧力低下 Static側50のまま」。Pitot側の差分-10 より、速度が遅く表示される。
対処: 対処方法は2つ
1、代替のStatic systemを使用する。
Cessna172には中央に赤いノブがあります。こちらを引きます。Piper28だと左側面の下部についています。
機体によって方法はことなりますのでご留意ください。
2、Vertical Speed Indicator の風防を割る。
Static portが詰まっているのであれば、別の穴をあければいいじゃない!の考えです。間違えても高度計を割らないようにしてください☆
Altimeter(高度計)
小型機には基本的にこの気圧高度計がついています。最近はG5やG1000といったGARMINの提供するデジタル高度計もあります。
AltimeterはStatic portと接続されており、ケースの中は外気圧と同じになります。図にある「Aneroido wafer(アネロイド:空盒)」には標準大気圧(29.92 inchHg)が詰まっています。高度を上げていくと外気圧は下がっていきますが、アネロイド内の圧力は一定のため膨らみ、その厚みで歯車が回って高度を示します。
※アネロイドも、アコーディオンの蛇腹みたいなものです。
では、Static portが詰まってしまったらどうなるのか
Static portが詰まってしまった場合
原因: 着氷 や、虫などの異物が詰まる
現象:外気圧との調整が阻害される=詰まったときの高度のまま止まる
対処: 対処方法は2つ
1、代替のStatic systemを使用する。
2、 Vertical Speed Indicator の風防を割る。
Vertical Speed Indicator(昇降計)
一時的な上昇/下降の速度を Feet/min で表します。IFRでは必需品の計器。
「ダイアフラムとStatic portは直接接続」されています。「ケースとStatic portの間にはCalibrated leak」というケース内圧力の増減を遅れて行うための調整バルブを介して接続されています。これによって、一時的な上昇や下降の際に生じる圧力変化をダイアフラムの膨張と収縮から数値化するのです。
・・・・・・・・うん。びっくりするくらい分かりにくいので、図でざっくり示してみます。
時系列:機体が一定高度行から下降し、再度一定高度で飛行した場合。赤点が分子量
原因: 着氷 や、虫などの異物が詰まる
現象:外気圧との調整が阻害され、0表示となる。
対処: 対処方法は1つだけ。代替のStatic systemを使用する。この際、表示は「上昇側」に少しだけ傾き安定します。
以上
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
もし疑問に思った点や、おかしな点があればコメントください。
参考:
FAAのサイトより https://www.faa.gov/regulations_policies/handbooks_manuals/aviation/phak/media/10_phak_ch8.pdf